盛岡市地域おこし協力隊活動報告(令和6年10月・阿形隊員)
広報ID1049585 更新日 令和6年10月30日 印刷
鳥獣被害対策担当の阿形です。
うだるような暑さも過ぎ私の住んでいる玉山地域では、朝晩は涼しいを通り越して寒く感じる様になりました。いつの間にか季節は秋ですね。今年の夏ももう本当に暑くて、汗っかきの私としては汗拭きタオルを数枚用意しても直ぐにびしょびしょになりました。有害駆除用の罠の設置をしていても設置しているそばから額から汗がボタボタと流れ落ちてきて、臭いに敏感な野生動物を捕獲するのにどうなの?と思うような状況でしたね。ようやくその暑さからも解放されてつかの間の秋を楽しんでいる今日この頃です。
前回の記事で誘引餌に触れたので、今回も追記と自分なりの考えについて述べさせていただきます。
家畜用の餌でヘイキューブという牧草を乾燥させてキューブ状に固めた物があります。他県ですがこれを使ってシカの誘引の実証実験を行ったところ、かなり有効であると複数の地域から報告があったので、私も期待して実証実験を行ってみたのですが、複数個所でそれなりの期間をかけても、食べるどころか見向きもされませんでした。やり方に問題があるのかと場所を変えたり、餌の容器を変えたりとしてみましたが一向に食べる気配はありませんでした。同じ場所で別な餌を使って同様に試してみたところ、米糠や配合飼料には多少嗜好性がみられました。これは一体どういうことなのだろうと考えたところ、出てきた答えは、この地域には牧草地が多いからなのではないかということでした。これはあくまでも私の持論なのですが、新鮮で柔らかな牧草が豊富な地域においては、乾燥させて硬く固めてある固形飼料等は興味の対象にすらならないのではと思われます。冬、牧草地に雪が積もり凍結して牧草を食べることが出来ない状況になれば、誘引することが出来るのかもしれませんが。ただ、私も積雪期に誘引実験を行いましたが。ヘイキューブに限らず、固形飼料は非常に湿気やすいうえ、湿気ってしまった餌を動物が好まないという傾向もあるため、餌の管理の手間も考え合わせるとあまり実用的とは言えないと思います。一般的に有効といわれている誘引餌であっても、各々の地域の環境や特性により変わってくるものなのだと勉強になった事案でした。
それと似たような考え方の事例がもう一つあります。全国の鳥獣被害の報告書等では、果物の生産の盛んな地域において、主力となる生産果実がシカの食害を受け深刻な状況にあるということを目にします。私の担当している地域には少ないのですが二軒の果樹園があり、主にリンゴを生産しています。どちらも山あいの典型的な中山間地にある果樹園で、シカの生息数も多い地域であることから、着任当初にさぞや果実の被害も相当にあるのだろうと話を聞いたところ、「リンゴの木の新芽や植樹した苗木の食害はあるものの、シカによる果実の被害はほとんどない」と、意外な返答をもらいました。はて?これはまたどういうことなのでしょう。そんなことはないだろうと思い、監視用のトレイルカメラを設置してシカの観察を行いましたが、本当に食べていませんでした。当初はその答えが解らなかったのですが、ある程度経験を積みこの地域の動物と向き合っている中で、何となくわかってきました。
これも私の勝手な持論ですので悪しからず。と前置きをした上で。他の地域に比べて果樹園の数が少ないことが幸いしているのではないのかと結論付けました。どういう事かと言いますと、リンゴの果実が有るのは果樹園がある地域限定という事になるので他でリンゴの果実を食べたことがない。食べる機会がないので食べ物として認識していないのではないかと考えた次第です。しかも二軒の果樹園は狭い地域に隣り合わせであります。当然リンゴと出会える可能性は低くなりますよね。
ただシカも適応力があり、学習もします。リンゴの実を食べ物と認識すれば食べるようになってくるでしょう。事実一昨年辺りからですが、落下しているリンゴの実にシカと思われる食痕が見受けられるようになりました。こうなるとリンゴを食べ物と認識したシカは全て捕獲しないと被害が拡がってくるだろうと危惧しています。同じ種の動物であっても生息している地域特性や環境により食性や生態も変化してくるのではないかと考えています。
そのほか、何となく遊び半分で試して分かったこと。
- シカは、辛党である(辛党といっても塩辛いもの)。
- イノシシは、甘党です(特に発酵して甘さを持ったもの)。
- クマは吞べえ?(揮発性の高いもの、油性の塗料やガソリンにも興味を示す)。
協力隊員として活動を始めて三年。思いつくまま時には馬鹿げた事も含め鳥獣の嗜好性について色々と試してきました。なかなか文章でお伝えするのも難しいです。誘引捕獲や野生動物に興味のある方。私でわかることでしたらお話しさせていただきますので、ご連絡ください。よもやま話しましょう。
話は変わりまして、7月20日、27日。8月3日に渋民公民館主催で第二回『けもの学』という講座をおこないました。講師は岩手大学准教授の山内先生と私。山内先生はクマの研究者として御高名な方で、昨年全国的にクマの被害が多く世間を騒がせていた時には、テレビのニュースやワイドショーの解説者として観ない日は無いというくらい引っ張りだこで御活躍されている方です。そのような方と恐れ多くも席を並べての講師役を務めさせていただきました。
参加者の方々は定員制で十数名、純粋に動物に興味のある方やアウトドアの遊びが好きで野生動物と鉢合わせしてしまった時の対処法を知りたいという方、農家で実際に鳥獣被害にあわれている方、中には現役のハンターさんまでおり、各々がそれぞれの思いをもって御参加くださいました。内容は1回目が山内先生による動物(主にシカ)の生態について、資料や映像を観ながらの講義。2回目は私の担当で、圃場に実際に設置してある大型のかこい罠を現地まで行って見学しながら、各動物に合った捕獲罠を見てもらったり、手に取って作動の確認をしてもらったりしました。3回目は、前2回の内容を踏まえながら思ったこと、感じたこと等を小グループに分かれて話し合ってもらいそれを最後にまとめて発表してもらいました。大変貴重な経験で楽しかったです。
最後に、9月30日、大ケ生で活動されていた協力隊の仲間の山代隊員が退任されました。3年間本当にお疲れ様でした。また、楽しい思い出をありがとう。今後の活躍を祈っていますよ。
ガンバレ!
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