盛岡市ひとり親世帯の子どもの生活実態に関する調査

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広報ID1025856  更新日 平成31年4月2日 印刷 

盛岡市ひとり親世帯の子どもの生活実態に関する調査

齋藤明彦准教授の写真

「ひとり親世帯の子どもの生活実態に関する研究会」の研究代表者として、盛岡市と連携してひとり親家庭に関する調査を実施した、岩手県立大学社会福祉学部の齋藤昭彦教授からお話を聞きました。


ー「盛岡市ひとり親世帯の子どもの生活実態に関する調査」について、実施の経緯を教えてください。

 平成26年に子どもの貧困に関する国の法律が作られましたが、具体的な施策は各自治体で行うよう求められていました。施策を講じる前段階として、まずは子どもの貧困についての基礎データを把握する必要がありましたが、市は、以前に県立大学の生活保護世帯への支援に関する研究などにも参加していただいておりましたので、そうした実績を生かして協働研究として今回の実態調査を行うことになりました。

ー調査の概要をお聞きします。

 平成25年の国民生活基礎調査では、子どもの相対的貧困率は16.3%となっており、特にひとり親世帯の貧困率は54.6%と極めて高いことが明らかとなっています。(相対的貧困=世帯の所得が、全世帯の所得の中間値の半分に満たない状態。平均的な文化水準・生活水準に比べて、適正な水準での生活を営むことが困難な状態。)
 こうしたことから、ひとり親の母子世帯を対象としてアンケートを実施し、子どもの生活実態や学習環境、母親の就労状況や生活意識を調査しました。回答率は41.1%でした。このアンケート結果をもとに、平成29年に研究報告書を作成しました。

インタビューの様子

ー調査によって見えてきたことはなんですか。

 子どもの貧困と言っても、子どもが一人で貧困状態に陥るわけではありません。まずは親の貧困、世帯の貧困を解決しなければ、貧困が再生産されてしまいます。こうした貧困の世代間連鎖を断つには、調査でも希望が多かった子どもに対する学習支援の充実が必要です。
 また、親と子が学歴や、職についてのスキルがない状態では、高収入の職に就くことが困難だと予想されます。親への就労支援、また、職業のスキルアップや学び直しに対する支援も求められています。

ー調査によって、ひとり親家庭の実態がさらに浮き彫りになった事が伺えますね。

 調査では、子どもを病院に連れて行けない理由として、最も多いのが「時間がない」、次に「医療費の支払いが困難」が挙げられています。親が病気の時に「子どもの面倒を見てくれる人がいない」との回答も15%あり、周囲に頼れる人がいない世帯も一定数いることもわかりました。
 ひとり親世帯は、もちろん全世帯ではないですが、「時間」「お金」そして「人間関係」の3つが「無い(乏しい)」傾向にあるとも言えます。経済的な理由が親戚や近隣、職場、学校での人間関係を徐々に希薄にし、親と子が地域や学校の中で孤立していくことも懸念されます。また、「お金の相談のできる人がいない」が約3割に上っています。状況が深刻になる前に早めに相談できる公的機関や体制の充実が必要です。

ー調査結果を受けて、市への影響についてはどうお考えでしょうか。

 今回のアンケートでは、最後に市に対する意見を自由に記述できる欄を設けましたが、この欄がいっぱいになるくらい、意見を書いてくださる方が多くいました。この中には、市への要望も多く書かれていますが、これは市への期待の大きさの表れだと思います。
 市ではアンケートを受けて、児童扶養手当の現況届出会場に、ひとり親の皆さんが子どもの養育費や資格取得などの相談ができる窓口を新設するなど、ひとり親支援の取り組みを拡充したと聞いています。このような取り組みもこの調査研究の成果の一つで、市に対する市民の信頼感が増すことにつながっていくと思います。

インタビューの様子

ー今後、盛岡市に期待することはなんですか。

 先ほども言いましたが、子どもの貧困は子どもだけの問題ではありません。その世帯、家庭全体を支援しなければ、抱えるさまざまな問題の解決につながらないため、ひとつの部署だけでなく、雇用、保健、福祉、教育などの多くの関係部署が連携して対応する必要があります。全庁的に子どもとその世帯を支援するシステムづくりを進め、福祉分野だけでなく、あらゆる部署の職員全員が子どもとその世帯を支援していくという意識を持って、それぞれの仕事を進めてほしいと思います。また、庁外の関係機関との連携も一層進めてほしいと思います。

ー最後に、市の子育て施策に対するご意見をお聞かせ下さい。

 市は、面接や家庭訪問を通じ、悩みを抱える子育て家庭に対して継続的な支援を行う「子ども未来ステーション」を開設しました。ここでは、相談者が一度だけでなく、リピーターになって何度も利用するケースがあると聞いています。これは、担当者が親身になって相談に対応しているからだと思います。今後とも、児童虐待の問題を含めさまざまな悩みや生活困難を抱える方々の相談に応じ支援する福祉専門職、ソーシャルワーカーを常勤で配置し、そうした職員を育成することが、より多くの市民の方々への相談支援のさらなる充実につながっていくと思います。
 市がこの調査研究を行ったことが、県や県内の他の市町村の同様の調査の実施につながっています。市が今回の調査をきっかけとして、子どもの貧困対策推進法の目的にある「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう」に、子どもの貧困対策を着実に進めることを期待しています。

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