農地集約システムの実証事業について
広報ID1047813 更新日 令和7年2月5日 印刷
日本の農地(圃場)は、それぞれの耕作者の農地がモザイク状に点在し入り混じっている「分散圃場」であり、作業時間の1割程度は農地間の移動にのみ費やされています。農業の生産性の向上を図り、地域農業の担い手が、今後増加が見込まれる離農者の農地を集積するためには、農地の面的な集約が不可欠です。
盛岡市では、令和4年度から市内の農地を対象として、経済学者 黒阪 健吾 氏(東北学院大学在籍)が開発した「農地集約システム」による実証事業を行っています。
システムの改良を重ね、将来的には、農地中間管理事業や地域農業経営基盤強化促進計画策定事業における農地所有者と耕作者のマッチングへの活用を目標としています。
農地の「集積(しゅうせき)」「集約(しゅうやく)」とは
農地「集積(しゅうせき)」とは
農地に耕作者を当てはめることを指します。
農地集積が進むことで、すべての農地が維持管理されている状態になります。区域内の全農地に対して、耕作者が確定している農地の割合を集積率といいます。
農地「集約(しゅうやく)」とは
耕作者同士が農地を交換することで、耕作地が団地化することを指します。
農地集約が進むことで、耕作地間の移動時間が短縮され、作業効率が高まります。団地数が減少または団地面積が拡大することで、集約が進んだことを定量的に把握できます。
農地集約システムの実証事業の概要
農地集約システムとは
経済学者 黒阪 健吾 氏(東北学院大学在籍)が開発したアプリケーションです。
農家が「耕作したくない自分の農地」と「耕作したい他人の農地」をそれぞれシステムに入力し、経済学のマッチング理論に基づき計算し、効果的な農地の集約(交換)案を作成します。
過年度の実証事業の成果について
令和4年度
広島修道大学(黒阪氏が令和4年度在籍)及び岩手県との共同研究契約に基づき、大字太田において、担い手農家13名(752筆/162.3ha)に協力いただき実証事業を行いました。
本年度は、農地の交換のシミュレーションを行うことで、マッチングアルゴリズム(システムの計算理論)を用いた集約案の有効性の実証を目的として実施されました。
事業の成果
310筆(41.2%)について耕作意向情報が入力され、79筆で意向が合致し(マッチング成功率25.5%)、集約(交換)案が作成されました。
令和5年度
広島修道大学(黒阪氏が令和5年度在籍)との共同研究契約に基づき、旧都南村域(大字上飯岡、湯沢、羽場)において、担い手農家16名(839筆)に協力いただき実証事業を行いました。
本年度は、集約(交換)案の提示と案に基づき実際に耕作権を再配分することを目的として実施されました。加えて、農地の交換前後の作業性を定量的に分析するため、GPS端末を用いた作業時間の計測を行いました。
事業の成果
235筆(28.0%)について耕作意向情報が入力され、56組で意向が合致し(マッチング成功率47.7%)、集約(交換)案が作成されました。団地数は175箇所から166箇所に減少(▲5.1%)しました。
また、農地の交換に限らず、農地を一方的に放出(規模縮小)または入手(規模拡大)する意向を入力した場合でもマッチングが成立し、本システムが農地集積にも有効であることが証明されました。
本事業で作成された集積・集約(交換)案に基づき、56筆中28筆については耕作地の交換が完了しました。令和6年度以降、残りの農地についても交換を進める予定です。


実施中の実証事業について
令和6年度
東北学院大学(黒阪氏が令和6年度在籍)及び農事組合法人となんとの共同研究契約に基づき、旧都南村全域において実証事業を行いました。
事業の結果は取りまとめが完了し次第、公開します。
研究者の紹介
黒阪 健吾(くろさか けんご)
1984年生まれ、北海道札幌市出身。北海道大学 大学院経済学研究科博士後期課程修了。専門は実験経済学。
「みなさんの農地に関する要望を調整するために経済学を役立てます」
略 歴
2024年4月-現在 東北学院大学 経済学部 経済学科/准教授
2020年4月-2024年3月 広島修道大学 経済科学部 現代経済学科/准教授
2015年4月-2020年3月 北海道武蔵女子短期大学 経済学科/准教授
2014年4月-2015年3月 北海道大学 経済学研究科/助教
小野寺 直喜(おのでら なおき)
1982年生まれ、岩手県奥州市出身。北海道大学 大学院公共政策大学院専門職学位課程修了。専門は公共政策学。
「農地集約で新たな扉を開きましょう!!!」
略 歴
2011年に岩手県入庁。農協指導、地方交付税算定補助、科学技術振興業務等に従事(人事交流による銀行業務・投資業務含む)。2024年4月から、県職員の職務を休職し、岩手県立大学総合政策研究科博士後期課程で農地集約事業について研究中。
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