盛岡市地域おこし協力隊活動報告(令和6年1月・山代隊員)
広報ID1046868 更新日 令和6年1月12日 印刷
盛岡市、大ケ生(おおがゆう)地域で地域おこし協力隊を担当しています、山代森(農政課所属)です。
私は「金山の里・大ケ生地域における山里暮らしの継承支援」をテーマに令和3(2021)年10月から活動を続けています。前回の活動報告では、ここ大ケ生地域での暮らしの「支援」・「記録」・「実践」という3つのテーマからご紹介しました。
今回は、この記事の掲載が1月ということもあり、「冬」という視点でいくつかの活動内容を少し掘り下げてご説明したいと思います。
地域に住みながら協力隊の活動を続けている私にとって、活動の内容は季節の移ろいと共に変化していきます。春夏秋は農作業や郷土芸能、イベントの開催などが忙しく慌ただしい毎日ですが、雪の降る農閑期は、それまでの賑やかさとは一転、一つひとつの活動に時間をかけてじっくり取り組んでいる印象です。あちこち家の煙突から薪ストーブの煙が上るのを見ると、今年もいよいよ冬が来たのだ、と寒さに身構えながらも、気持ちを冬に切り替えることができます。
(1)正月飾りの取材
大ケ生地域には、年の瀬に古くから続く正月飾りを作っているお家があります。私は着任してから、この正月飾りの作業工程を毎年取材させて頂いています。
正月飾りは買い揃えるもの、というイメージがあった私は、一部を除いて家の周りの材料で飾りが完成することに感銘をうけました。「としな」と呼ばれるしめ縄には田んぼの藁や松の枝を、「たつき」と呼ばれる門松には山の栗の木を用います。かつて複数のお家で作られていたこの正月飾りは、作り手の高齢化などにより現在一軒でしか作られておらず、担い手もいないのが現状です。私は取材をする中でその作り方を教わりながら、写真で記録し、地元の情報誌などで掲載してもらいました。地域の特色を残す習慣が、長く続いてほしいと願う一方で、代々続いてきたその家の文化を、どの様に伝えていけばよいか、具体策を思案する必要があります。これは他の伝統文化にも通じる課題です。
ここ大ケ生地域には、正月飾りの他にも、古くから続く小さな行事や風習が数多く残っています。地元の皆さんのご協力の元、四季の行事を取材して回っています。
(2)布を織る
山で素材を採集するところから始まり、昔ながらの手法で布を織るプロジェクトです。
現在のように、手軽に衣類や布製品が手に入らなかった時代、山里では身近な植物の繊維から布を織るという営みが、日常の仕事として続けられていました。私が素材として活用しているシナノキは、東北地方の広い範囲に自生している落葉高木で、樹皮が非常に強靭なことで知られています。
梅雨に樹皮採取をしたり、気温の高いお盆に繊維を発酵・漂白させたりと、年中通して作業を続けていますが、農作業が少なくなる11月下旬から、布を織るための準備が本格化します。まずは、糸づくりです。夏から秋に加工した樹皮を経糸と緯糸に分け、一本一本指先で撚り繋いでいきます。非常に根気のいる作業ですが、雪で覆われる東北の環境だからこそできる、冬の仕事です。一冬かけて繋いだ糸は、撚りを掛け、いよいよ織機にセットします。そこから春にかけて一枚布へと織り上げていくのです。昨年春に初めての布が出来上がり、現在は2度目の糸づくりの最中です。今年は織り上げた布を用いて商品化することを目標に、作業に励んでいきます。
(3)薪づくり
活動拠点であり、住居でもある古民家は築百数十年ほどの曲がり家です。エアコンも断熱材も入っていない建物で一冬越すためには、たくさんの薪が必要となります。薪を自分で用意できるよう、チェーンソーの安全講習を1年間受講しました。講習では樹木の伐倒、集材、枝を払って切り分けるところまで一連の手順を学びます。
チェーンソーを扱えるようになったことで、地域の方からの薪づくりの依頼も増え、昨年は、山の間伐作業にも参加しました。また、薪ストーブは定期的に掃除をしないと煤で詰まってしまう為、単身世帯の煙突掃除も月に一回伺っています。
(4)狩猟
地域の中で大きな課題となっているのがシカやイノシシなどの野生動物による農作物への被害です。活動2年目の秋、先輩協力隊が企画した勉強会をきっかけに罠猟の免許を取得しました。捕獲するのは、地域で急増しているニホンジカです。初めての猟期となった昨シーズンは一頭のみの捕獲でしたが、今季は罠の設置場所も増やし、既に2頭を捕らえました。3月までの残りの期間、少しでも農作物の被害を抑えられるよう、仲間のハンターさんたちと試行錯誤しながら活動を続けていきます。
現在、盛岡市には、野生動物の加工処理施設が無い為、捕獲した動物を食肉用として商品化することはできません。そもそも、人間の都合で野生生物の命を奪うのはどうなのか?という意見もあると思います。一方で、電気柵などで田畑を囲っても一向に被害を抑えることができず、以前のように農作物を栽培することが難しいと、嘆く農家さんの切実な意見も痛いほど分かるのです。有害獣とはいえ、狩猟によって動物の命を奪うことに変わりはありません。頂いた命は責任を持って自分で食べる。些細な活動かもしれませんが、自分にできることを続けていきます。
方向性もばらばらで、取り留めのない冬の活動ですが、私は活動の中で関わる人や場所、知恵や技術、すべてが他に変えようのない地域の財産であり、「地域で暮らすことの醍醐味」だと感じています。大ケ生地域には、商業施設や観光施設がありません。ですが、人の暮らしや、自然との付き合い方、そして代々受け継がれてきた小さくとも大切な暮らしの宝庫です。
協力隊として迎えた3回目の冬。今年も寒さに負けず、活動を続けて参ります。
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